第二章 酒場にて

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 話し終えたエルドレッドも、相棒の態度の淡泊さに気勢を殺がれ、続ける言葉を見出せない。 「……シオン?」  散々頭の中をかき回し、エルドレッドはようやく相棒の名前だけを口にした。  即座に返ってきたのは、飽くまで冷淡なシオンの視線。  卵を食べ終え、しなやかな指先についた塩を軽く舐めながら、シオンはたった一言問う。 「自信はあるのか?』 「自信?」  鴎鵡返しにシオンの問いをなぞり、エルドレッドは意図せずうつむく。 「まだ受けるって決めたわけじゃないんだけど」  力のない口調で言葉を濁した彼だったが、すぐに顔を上げて相棒に聞き返した。 「シオンは?」 「俺は御免だ。しばらく余計なことはしたくない、と言っただろう」  きっぱりと言い放ち、シオンがおもむろに腰を上げた。  彼は懐から小さな革の袋を出し、エルドレッドに投げてよこす。  ずっしりと重たい財布を受け止めたエルドレッドに、シオンが続けて言う。 「行きたいなら行ってこい。俺は先に宿に入る」 「分かった」  相棒を見上げ、エルドレッドはうなずいた。  彼を正視するシオンの真紅の瞳は、薄氷のように冷たく鋭い。  しかしエルドレッドは、その凍てつく被膜の底にふつふつと息づく、ほのかな温かさに気が付いた。     
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