第二章 酒場にて

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 シオンの顔を真っ直ぐに見返して、エルドレッドは笑顔を見せる。 「もう少し考えてみる」 「ああ」  軽くうなずいたシオンは、カウンターの向こうの主人に目を移した。 「邪魔したな。さすが、いい酒だった。やはり地元で飲む酒は違う」  主人も満足そうに笑い、何度もうなずく。 「そうだろう。次は飲み代を払ってくれよ」 「そうしよう。それだけの価値はあった」  シオンはまだステーキを食べかけのエルドレッドを残し、この酒場“銀羊軒”を出て行った。  預かった財布を懐に入れ、再びナイフとフォークを取るエルドレッド。  食べかけの巨大な肉塊に喰らい付く彼の前に、主人が肘を付いた。 「いい男だなあ、あの男は」  休みなくナイフとフォークを動かしながら、エルドレッドは目だけを主人に向けた。  彼の目に映る老人は、楽しげに目尻を下げている。 「あれは何者だね?」 「シオン?」  主人の問いに、エルドレッドは思わず手を止めた。  彼がシオンについて知っていることは、知らないことの一割にも満たないだろう。  その中でも、さらに他人に話せるようなものは、恐らく数えるほどしかない。  クライフが口走ったシオンの通り名さえ、口に出すのが憚られる気がした。     
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