第二章 酒場にて

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 わずかな間に思考を巡らせたエルドレッドは、主人に小さく首を傾げて見せる。 「俺も詳しいことは知らないんだ。シオンのことは。半年くらい前から一緒に旅してるんだけど」 「あの男も冒険者か?」  主人に重ねて問われ、エルドレッドは首を横に振る。 「そうじゃないよ。でも、いろいろ教えてくれてる。それだけでもいいんだ」  やがてエルドレッドは、ナイフとフォークを置いた。  それでもまだ微妙に空腹を覚える彼は、骨に残った肉をかじりにかかる。 「それはそうと、お前さん、あの張り紙の主のところへ行く気か?」  主人の問いを聞きながら、エルドレッドは真っ白な骨を鉄板の上に投げ出した。  ようやく心身の充足を目一杯に感じ、彼は小さく息をつく。 「そのつもりなんだけど。話だけでも聞いてみたいし」  エルドレッドが答えると、主人の表情が変わった。  彼は口許をきっと結び、老成した眼差しでエルドレッドを正視する。 「確かあの張り紙には、『鉱洞探索』とあったな」 「ああ、そうだよ」  何げなくうなずいたエルドレッドに、主人が短く忠告する。 「もし、その鉱洞が荒野の岩山だったら、お前さん、この話は降りた方がいいぞ」 「えっ? どうして」  ぴくっと顔を上げたエルドレッド。     
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