第二章 酒場にて

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 どうしてそんなことを言うのか、彼は疑問に満ちた鳶色の視線を主人に注ぐ。  その主人は、エルドレッドの顔を真っ直ぐに見ながら、ゆっくりと話し始めた。 「あの岩山は、昔、宝石鉱山だった。それはいい宝石が採れたもんだ。だがいつの頃からか、魔物が棲み付いてな」 「魔物?」 「ああ、そうだ」  主人が一瞬エルドレッドから目を外し、虚空に言葉を綴る。 「まだわしが子供の時分だから、数十年は前か。それ以来、あの鉱洞は見捨てられたままだ。鉱夫たちもみんな去って、鉱山の周りにあった鉱夫小屋も残らず放棄された。この村が寂れ たのもそれからだ」  そこで主人は、小さくため息をついた。  懐かしげに彼方を見つめ、主人は深く吐息をつく。 「が、それでも、あの鉱洞に入る冒険者は跡を断たんかった。魔物を倒せば宝石と栄誉、両方を手に入れることができるからな。しかし鉱洞に入って、戻った者はまだおらん。それでとうとう、誰も岩山には近付かんようになった」  主人の昔話に黙々と耳を傾けたエルドレッドは、試しに聞いてみた。 「魔物って、どんなやつ?」  しかし主人は、首を横に振るばかり。 「わしは知らん。誰も知りはせんだろ。わしが知る限り、鉱洞から戻った者もおらんし、この村の者は誰もあの鉱山には近寄らん」     
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