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そしてその真紅の瞳は、青年が実際に人間とは異なる者であることを暗示している。
飾り気の全くない、質素な長剣を腰に吊った少年は、足を止めずに青年に話しかける。
「あー、野宿の連続で疲れちゃったよ。これでベッドで休める。あ、でもそれより食事かな? このところまともな物を食べてないしさ」
「お前の料理が不味いだけだ、エルドレッド」
すかさず横槍を喰らったこの少年、エルドレッドは即座に反発して、頬を膨れさせる。
「そんなこと言ったって、仕方ないじゃないか。何でも器用なシオンと比べられても困るよ。俺とシオンじゃ、経験が違い過ぎるんだ。大体、シオンは今年で何歳なんだよ」
「数え切れるものじゃない」
そううそぶいた青年シオンは、何の感情も伺えない口調で続ける。
「だから俺の経験を多少なりとも、分けてやってるところだろう。それがお前の希望だったからな」
「そうだね」
シオンの冷淡な言葉を聞き、エルドレッドも感謝を込めて軽くうなずく。
「シオンを匿ったのは偶然だったけど、今はすごく助かってるよ。ありがとう」
「礼など言うな。俺が次の都市へ行くまでの間のことに過ぎん。大してお前の血肉には、ならんだろうがな」
真意がどこにあるのか測りがたい、冷ややかな物言いだが、エルドレッドは素直にうなずく。
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