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「坊主、おめえは若いんだし、怪我なんかしたくねえだろが」
この男の挑発的な言葉を聞いて、シオンが冷淡な苦笑を洩らした。
「お前も舐められたものだな、エルドレッド」
諧謔的な口調で言いながら、シオンが肩をすくめる。
「武装した戦士、それも騎士を目指そうという男が掛けられるような言葉じゃない」
「分かってるよ」
反抗的に返したエルドレッドは、口許をむっと曲げた。
確かに、エルドレッドはまだ若い。
それに武装しているとはいえ、彼の顔付きは戦士と主張するには、少々柔和過ぎる。
頬を膨れさせた彼は、長身のシオンを反抗的に見上げた。
シオンも、彼の不機嫌な眼差しを受けて、おどけたように再び肩をすくめる。
エルドレッドは、もう一度正面に顔を向けた。
その鳶色の瞳に強い反発と闘志を載せて、目の前の男をぐっと睨む。
……この三人組の野盗は、すぐに襲い掛かってこなかった。
まず話しかけてきたところを見ると、ことを荒立てたくないのか、それともこちらを警戒しているのか、どちらかに違いない。
いずれにしても、この野盗たちは、あまり腕には自信がないのだろう。
そこまで考えた彼は、両腕を組んだ。あえて腰の剣には手を延ばさずに、正面の野盗を見据える。
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