それは彼女にとっては、呼吸をするように自然な事

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「あと、親がね。『右耳を大事にしなさい』とか、『ヘッドホンは止めろ』とか、『プールには入るな』とか結構神経質になってたわ。それで私も結構耳掃除をしていたら、やり過ぎて傷を付けたらしくて、結構な頻度で外耳炎になってたのよ」 「何をやってるのよ……。でも、妹思いの良いお姉ちゃんだね」  脱力しつつも千尋は唯を誉めたが、本人は素っ気なく否定した。 「別に、そんなんじゃないわよ。今まで本当に意識していなかったから、さっき指摘されて初めて自覚した位だし。最近、益々生意気になって、『お姉ちゃんの服がダサい』とか駄目出ししてくるのよ? 可愛くないったらありゃしない」  そこで少し考え込んでから、千尋が問いを発した。 「ところで……、その妹さんって、ひょっとして今度高三?」 「そうよ。どうして分かったの? 言ったことは無いよね?」 「……何となくよ」 (だって無意識に、入試の時のリスニングの心配をしてるじゃない)  不思議そうに首を傾げた唯を見て、千尋は笑い出したいのを必死に堪えた。しかしそれは、微妙に唯の不興を買った。 「……何よ、ニヤニヤして気持ち悪いわね」 「思い出し笑いよ。早く食べましょ。朱里達を待たせると、後が怖いから」 「そうね」  そして少し前に運ばれてきたプレートに手を伸ばしながら、千尋は(これからも唯が誰かと並んで歩く時は、無意識に右側を歩くのだろうな)と考えていた。
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