第三章

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 希美子さんはどうも寡黙で真っ直ぐな人が良いらしい。彼女に言わせれば男の喋りはみっともないらしい。此の職場で野性的な人間は全てふるい落とされて深山さんしか残ってなかった。だけどべったりでもなく、二人の間には野村しか入り込めない隙間があった。  その隙間とは彼女、波多野希美子の性格、生き方にあった。希美子は男にすがるタイプではなく、むしろ磨きを掛けて育てる方だった。だから野村の未熟さは彼女の母性本能も刺激してほっとけないらしい。  本宅には三十代の女性は一人だけで後は二十代ばかりだった。だから寮に住み込んでから野村の生活環境は一変した。まず朝昼晩の食事が賑やかになり、しかも若い女性と一緒だから華やかにもなった。なんせ二十歳前の野村には色々と気を遣ってくれた。特に希美子は姉のような存在だった。  寮に居る他の四人の男性の内、白井を除く三人には同じく本宅の寮の女性と三組のペアがすでに出来上がっていた。十代の白井だけはまだ女よりギターに熱を挙げていた。     
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