第一章

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 一週間で抜粋した。欠勤当日は交通事故で入院だから連絡の仕様が無いから無断欠勤は吹っ飛んだ。もっとも事故は夕方でそれまで何をしていたかは不問に付された。  これで会社では淡々と辞める交渉が出来た。その前に親が次の仕事を決めたらしいと伝えていたからスンナリと辞められた。無断欠勤して彷徨ったあの耐え難い恐怖は一体何だったのだろう。死から逃れたい思いが奇跡を作ったのだろうか? 彼は会社の帰り道に考えながらあの日面接を受けた友禅の個人経営の会社へ行った。入院中に母が事情を説明して先生は待機していた。   よう来てくれたと歓迎された。それほど彼に期待していたようだった。ここで面接した先生と呼ばれた事業主の山村は、住み込みでやってくれることを希望した。その方が憶えが早く遣り甲斐があるらしい。面接当時に応対した女の子もここに住み込んでいた。 彼女とは先ほど、路地の角でぶつかった。ニキビ顔の普通の若い女性だが触れた状態はどうであれ思春期になってから異性と接触した事に変わりはなかった。驚いた彼は転けてしまった。勝手に転けたのに彼女は自分のせいの様に起こしてくれて「どうもありませんか」と謝っていた。  些細な事だが咄嗟にその新鮮な出来事の印象も強かった。これが寮に入れば他の女の子にも身近に接しられる。これらの諸条件が誘惑したがまだ不安もあって様子見で暫く通勤にした。     
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