天使のお告げは

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「あなたは選ばれたのです!」 天使の声で顔をあげる。覚悟はできていた。なのに。 その指が指さしていたのは俺ではなかった。 話を前に戻そう。 俺達の村の中では、毎年「勇者」と呼ばれる者が選ばれる。勇者になった者は魔王を倒しに行くという典型的な仕事を課せられる。 しかし、俺らの魔王はちょっと例外だ。まず、勇者を選ぶのは魔王なのだ。魔王は温厚な性格をしていて、暇つぶしに勇者と戦う。だから勇者は負けても死なない。魔王も同様だ。 村に直接来て魔王の選択を伝えるのが通称「天使」という訳だ。 そして、今年は俺が勇者になる有力候補と言われていた。俺はほとんど、そのために生まれてきたようなものだ。魔王の暇つぶしと軽くは言っても、魔王城までの果てしない道のり、簡単には勝たせてくれない魔王との対決。 死者も珍しくない。 俺は小さい頃から身体を鍛え上げ、英才教育を受けてきた。村の全員が、俺が選ばれると信じていた。 そして冒頭に戻る。 幼女の姿をした天使が微笑みかけたのは俺ではなかった。 俺の親友だった。そいつは身体も貧弱で、たいして頭も良くなかった。 「なんでだよ!俺じゃないのか?!」 俺は天使に叫ぶ。天使は俺を一瞥して、鼻で笑った。 「なぁに、選ばれると思ってたの? 馬鹿ね……まぁ、魔王の言うことは…」 天使は親友の肩を叩く。 「絶対。な、諦めろ」 親友も悪い笑顔で俺を諭した。 次の朝、親友は大勢に見送られて村を出た。俺も見送りに行った。 「………頑張れよ、俺の分も」 「もちろんだよ…でも、今から入れ替わりたいくらい不安だ」 親友は昨日とは打って変わって眉を八の字にする。 「何言ってる、この俺を差し置いて選ばれたんだから大丈夫だよ」 俺は選ばれなかった苛立ちを必死に噛み殺す。 親友はそうだね、と笑った。 勇者が村を発ったあと、俺は自室に篭っていた。 村人も家族も、皆が俺を軽蔑の目で見ているような気がした。 「なんでだよ………っ」
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