この世界は

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この世界は

ついに候補が俺以外いなくなると、天使は俺に告げた。 「勇者よ」 俺は驚いて言葉が出なかった。これ以上の犠牲を出そうというのか? 「………この世界は…間違ってると思わない?」 「は?」 天使は淡々と語る。 「間違ってるよね。こんな世界。 皆が大好きな優しい魔王。年に一人選ばれる勇者。それを告げる天使。そして、勇者になるために生まれてくる村人も。 全部間違ってる」 「何が言いたいんだ?」 天使は泣き始めた。 「………嘘なんだよ、全部。 魔王の正体は天使。天使と呼ばれる者達の長なの。本当はちっとも優しくなんかない。魔王が勇者を暇つぶしに呼ぶのは本当のことだけどね。 ……勇者に選ばれた奴らは道中でなんか死んじゃいない。魔王と戦って負けたんだ。勇者が生きて帰ってくる時は、その時の魔王が殺されて新しい魔王が誕生する時。 ……っ…僕達、通称『天使』は元はみんな人間なんだよ。魔王によって翼を与えられて、幼女のまま歳を取らないけど」 俺は唖然とするほかなかった。小さい頃から村の誰しもが教えられる一般常識がいとも容易く覆された。 「なんで……嘘をつくんだよ」 天使は俺の顔を見て、また別の方を向いて話し始めた。 「知ってる?ここの隣町ではね、通称『勇者』が『天使』を選びに来るっていう伝統があるの。 隣町の『勇者』は僕達より位が一つ上の天使達のこと。彼女達に選ばれた僕達はこの村から勇者を連れていって、魔王に献上する。そういうシステムなの。 この国を形成する十の市町村はそうやって繋がってるの。ここが終着地点っていうところかな。 『勇者』、今の話を聞いてどう思う?」 天使は俺に微笑みかける。 「………どうして真実を民草に伝えないんだ?」 「それは簡単な質問。歴代魔王がみんな、隠し事が好きだから。騙されて、喜んで天使や勇者を献上する民を見て嘲笑うのが趣味なの。もっとも、この事実を知るのは全国で魔王と僕と君だけなんだけどね?」 「え?」 「僕は魔王と遠ーーーーーい親戚関係らしくてね。位は低いけど、魔王から情報を盗めたってワケ。
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