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ただいま
『作用、反作用か懐かしいな』
どこかの学習塾の広告を目にした智子は夕方のラッシュアワーの中にいた。
人並みに勉強をし、大学を卒業して、氷河期の中、なんとか就職もできた。
恋愛に興味がなかったわけでもなく、それなりに飲み会にも出掛けていったこともあった。
転職も経験し、大きなヘマをやらかすこともなく仕事もこなしている。
自分一人だけを見つめると幸せでも不幸せでもなかったが、気づけば彼氏もなく独身アラフォー女性というジャンルを名乗るようになっていた。
会社では育児休暇の受け継ぎが、このところ増えてきた。
「少子化対策にしっかり貢献してるわね」
出産を控えた後輩が主役の会で、少し大人ぶった言葉を使うようにもなった。
幸せでも不幸せでもない、それが今の智子のぼんやりとした不安であり、結婚もせず、子どもも産まず、彼氏すら持たず、気づけば人並みから距離を持ってしまった自分が社会に居て良いのだろうかと感じずにはいられない。
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