<第二話>

4/6
前へ
/208ページ
次へ
 はぁ、とフレイアはため息をついた。魔王ジョブを持つ人間は、だからといって何もせずに捕まるということはない。ちゃんと人権も持っている。ただ、政府に申請すれば確実に毎日誰かに監視される生活が待っているというだけだ。魔王ジョブを持っている人間は国家転覆、ならびに世界征服を目論む可能性が高いとして生涯マークされることになるのである。ゆえに、ジョブが発覚しても申請しないか、違うジョブを申請して隠れる者が少なくない。もちろん、バレたら偽証罪に問われることは明白なのだが。  そしてそこまで政府が警戒するのは、それほどまでに魔王の力は強大であり、過去何度も世界に混乱をもたらしてきたからだった。そして、巨大に見えるすべての魔王たちが、勇者の手によって殺害されるか捕縛されてきたのも例年通りである。勇者、というのはジョブの名前ではない。世界を乱す魔王を捕まえるか殺すかした者は政府に感謝状を送られ、賞金と勇者の称号を与えられることになるのだ。 「捕まえたのは、ケイニー・コックスコウム。剣士のジョブを持つ冒険者ですね。……ほら、この人の写真も出ですよ、ここに」 「あ、ほんとだ」  テクノが指差した新聞のそこには、なるほど茶髪の屈強な青年が映っている。隣のレポーターの女性が平均的な身長だったとすれば、彼の背丈はゆうに190cmを越えてくることだろう。ぐんっ!と盛り上がった肩の筋肉とがっしり太い首回りが逞しい。格闘技の選手だと言われても納得しそうなほどの屈強な肉体の持ち主であるようだった。 「この、サンフラワーシティへの襲撃を企てていたところを、すんでのところでケイニーさん達が阻止したってことらしいです。事件を起こした潜伏していたトリアスを、ケイニーさんと仲間達で見つけ出したとかで」 「ふんふん」 「検察は着々と起訴の準備を進めているようです。目撃者も状況証拠も多いとかで……近日中にでも、トリアスは容疑者から被告になることかなと。でも、トリアスの弁護を引き受けたいという弁護士が見つかってないみたいですよ。まあ、世界を支配しようとした悪者の弁護なんて誰も引き受けたくないのでしょうけど」
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加