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全ての魔王と呼ばれる存在は、勇者に倒されるのが定めである。
それはこの世界、フラワーメイルであっても同様のこと。国際裁判所の廊下にて、検事であるボルガ=バターカップは思った。今回の事件など、取るに足らないもの。この世界でそれなりの頻度で起きている、有りふれた事例の一つではないか、と。
平和で資源が豊富なこの世界を支配し、我が物としようとする魔王は、数年に一回くらいのペースで現れる。そのたびに勇者に討伐されて、運良く生き延びても裁判にかけられて高い確率で処刑、ごく一部が終身刑になるのは何も珍しいことではない。そう、今回もそういう事件だった。近年でも最強の力を持つとされる魔王トリアス=マリーゴールド。世界征服をしようと目論んだ魔王が、勇者ケイニー=コックスコウムに倒されて捕まり、裁判にかけられることになった。魔王トリアスの犯行は多くの目撃者もおり、様々な状況証拠もあることから確定的とされている。そして、そんな明らかな大罪人の弁護を引き受けたいなどという物好きはそう存在するものではない。
今回も、やる気のない国選弁護人がついて、さっくり有罪からの死刑判決で裁判は終わるだろうと思われていた。そう、ボルガも気楽に構えていたというのに。
「悪いがジイさんよ。……魔王トリアスは、俺が弁護するから」
目の前にいる赤髪の青年は、ロータス連邦所属の弁護士バッジをつけている。
仁王立ちして、明白なまでにボルガの行く手を阻んでいた。
「トリアス・マリーゴールドは無罪だ。俺がそれを、証明してやるよ」
彼のことは知っていた。金にならない刑事事件ばかりを受け持つ、白魔導師のジョブを持つ異端の弁護士。若干十八歳で大学を飛び級合格した天才にして変人。
フレイア・ブロッサム。
またの名を――正義の反逆者・フレイという。
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