<第二話>

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「ですが、魔王のジョブ所持者には身体的な特徴があるので、見抜かれてしまうことも多いらしいですね。まず第一に、美形揃いです。男性が多いですが時々女性の魔王もいます。過去に逮捕された魔王は全て天下絶世の美男と美女しかいませんでした、実に羨ましいことに」 「モテるだろーなそりゃ。お前みたいなチビと違って……あでっ!」 「煩い、殺しますよ。……まあ実際モテすぎて怪しまれたケースもあったみたいですけどね」  小柄で童顔、子供みたいな姿をしているくせに、容赦ないのがテクノである。こいつなんでパラリーガルなんてものをやってるんだろうと思わずにはいられないフレイアだった。今のパンチで見ての通り、こんなに小さくて華奢なのにテクノのジョブは拳闘士なのである。本気で殴られたらマジで殺されるわ、と冷や汗をかくフレイア。ボサボサな赤毛を手でいじくりつつ、ほりげなくテクノから距離を取った。命は大事に。ほんと大事に。 「二つ目。魔王ジョブを持つ人間は、総じて両性具有とされています。一見すると男性か女性のどちらかに見えますが実際は両性体ということですね。ゆえに、身体検査をされることで魔王ジョブ持ちであることが露呈することが多いのだとか。まあ、精神的な性別は外見通りらしいですけど」 「美形で両性具有とか、隠れるのしんどいだろうなあ。……つか、こいつもそうだったんだろうな」  トン、とフレイアは新聞紙の顔写真を指でつついた。そこには、魔王トリアス・マリーゴールドが勇者に討伐されて逮捕されたという記事と共に、その噂の魔王の顔写真も出ている。フラワーメイルの新聞の有り難いことは、全ページフルカラーであるということか。  写真に映っているのは、魔王ジョブ持ちだと一目で納得できるほどの美しい青年だった。長い藍色の髪を長し、同じ色の瞳を伏せている。頬は白色人種の中にあっても透き通るように白い。まだ未成年。フレイアと同じ十八歳だ。記事を読み込み、フレイアは眉をひそめた。 「……罪状は、国家転覆計画罪と治安維持法違反、大量殺人と強盗と公務執行妨害、脅迫罪もろもろ……つまり、世界征服を目論んで暴れた、ってやつか。数年に一度、お決まりのようにあるイベントだな。ムカつくことに」
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