向日葵

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「ちぃばあちゃん!ねぇ、起きて!起きて!!」 孫とひ孫に身体を軽く揺すられて、 眉間に皺を寄せながら重い瞼を開ける。 開かれた障子の向こうから、瞳いっぱいに山吹色の空が飛び込んできて、 思わず目眩を起こしそうになる。 「大変なことが、起きたんだよ……」 孫の声に身体を半身起こすと、 「……え」 掠れた声が出て、そのまま私は固まってしまった。 障子の向こう、 広さだけは申し分ない殺風景な庭があるはずの場所に、 辺り一面、ひまわり畑が広がっていたのだ。 「どう、いう……」 そこまで言って、ハッとした。 …………けんちゃん、だ…… 『もし、本当に恩返し出来るとしたら、 私たちは誰に、何を返すんだろうね?』 自分が言った台詞が、頭のなかを過った。 「ふ、ふふ……」 笑いが込み上げてきて、ひ孫が不思議そうな表情で 「ちぃばあちゃんどうしたの……?」と尋ねてくる。 「……何でもないわ。 これは、きっとおじいちゃんからのお返しね」 状況が理解できない孫達を横目に、 私は目尻に浮かんだ涙をそっと拭った。 忘れないわ。 あの日のことも あなたのことも、一生ね。 「もう少ししたら、また逢いましょうね。 それまで…………」 待っていてくださいね、あのひまわり畑で。 Fin
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