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“死ぬときに、
一番大切な人に何か一つだけ恩返しができる”
オカルトマニアなてっちゃんがいかにも好きそうな話だ。
でも、ちょっとだけ興味が湧いた。
……“大切な人”
僕が死ぬときに一番大切だと思う人は、
誰なんだろう。
少なくとも、今は…………
チラリと横目に映した先には…………千草。
物心ついたときから、ちぃは僕の一番大切な女の子なんだ。
僕にとっては……
そう、このひまわりの花のように、
眩しくも、身近な、無くてはならない。
そんな存在。
「もしさぁ、それが本当だとしたら、
私たちは誰に何を返すんだろうね?」
ちぃが、僕達に問いかけた。
「うぅーん、大切な人、だろぉ?
やっぱり父さんと母さんとばぁちゃんかなぁ……」
てっちゃんは、
顎に手をあてて考え込むようにしながら答える。
「でもさ、僕らが死ぬときっつったら、自然の流れならその頃には皆この世に居ないんじゃないか?」
「あ、そっかぁ」
「誰に、何を……なんて、その時になってみないと思い付きもしないんだろうな、きっと……」
僕らは、まだ12歳。
大人にはなるにはまだ早く、
死ぬときのことを考えるには、まだ幼かった。
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