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「ぼろ小屋の中で牢に繋がれるか、家畜にも劣る扱いだな」
「会いに来てくれたのか…?」
「たわけたことを」
鼻を鳴らして見下ろせば男はこんな状態だというのにどこか嬉しそうだった。
「ここがお前の家か」
「まさか…もう少しましだよ…。色々あってね、盗人だと疑われて仕置されているんだ。でもそのうち出してもらえるさ」
悪魔の俺には体感温度なぞわからんが今は人間には寒さが厳しい時期の筈だ。
隙間風のふく小屋に冷たい石の上、ぼろきれの服のまま一体何日こうしていたのだろうか。
体は相変わらず傷だらけで、ろくに飯も食っていないのだろう。
この衰弱ぶりを見るに明らかだ。
「その前にお前が死ぬだろうな」
「はは…やだなあ、怖いことを言わないでくれよ…」
男はかすれた笑い声をあげた。
そして鉛でも埋め込まれているのかと思うほど重たく手足を動かして、なんとか上半身を起き上がらせる。
「君の方は…もう動けるようになったんだね…?そろそろ行くのかい…」
「ああ」
「…ならお別れの挨拶をしないとね」
いつもよりか細い震えた声だった。
「惨めだな。苦しいだろう、いっそ死んでしまいたい気分だろう」
男の心の闇を増長させるように囁けば、初めて男は弱音を口にした。
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