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「そんなに苦しい生を生きたいと言うなら望み通り苦しみを与えてやろう。永劫、天上には昇れずに悪魔の俺の隣で共に生きるのだ。死ぬことは許さん」
「それは…とても素敵な苦しみだね」
「俺に愛情などという感情を教えた罰だ」
大きく広げた翼で男を抱き込むように包み込む。
光は届かない、神の目にも触れぬ闇の中。
「参ろうぞ、共に、地の底へ」
「…君となら地獄でも生きられるよ」
男は両手を伸ばし俺の唇に自らの唇を重ね合わせた。
そして悪魔を魅了する程愛しいものを見る瞳で、笑った。
「愛してるよ」
「…俺もだ、阿呆」
迎えるのは誰にも祝福などされぬ不幸への門出。
だが男は、きっとこの世の誰よりも幸せそうな顔をした。
end
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