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「大丈夫、じっとして」
「寄るなという」
喉奥から獣のような唸り声をあげ牙を剥き出せば、男は瞳を揺らがせ怯えたが逃げることはしなかった。
おずおずと再び足を踏み出した足元からじゃらりと重たい音が聞こえる。
見れば男の足首には少し錆びた鉄の枷がはめられていることに気付いた。
薄汚い身なり、やせっぽちの体、痛々しい足枷と鎖…この男は奴隷だ。
どこかここに近い町か村か…別の人間に犬のように飼われているのだろう。
「怖がらないで、傷つけたりしないから」
「怖い?俺がお前のようなやせっぽちを怖がると思うか」
男の容姿を馬鹿にして言ってやったのに、男は本当だねと笑っただけだった。
「君は…悪魔?」
「それ以外に何に見える」
「僕、悪魔を初めて見たよ」
男は近くに落ちている枝を拾い集め自分の服を破いた布で繋ぎだした。
「何をしている」
「木枠を作って折れた部分を固定しようと思って…人間はこうして治療するから」
「いらない、失せろ」
男は俺の言葉など聞き入れもせずに勝手に治療しようとする。
「放っておけば治る、失せろ目障りだ」
「少し触るよ」
「っ…」
「ごめんね、痛い?すぐ終わるから」
男は勝手に添え木をすると持っていた縄で縛り固定をした。
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