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「ちっとも教えてくれないんだから…でもこの名前も格好いいだろう?」
次の日も、また次の日もずっと、男は俺の元へ通い続けた。
俺がいくら甘言で誘ってもただ笑うだけだった。
いい加減俺は苛々していた。
同じように男がやってきたある日。
いつもと男の様子が違った。
体の所々が青や赤色に変色をしていて、血が滲み、顔など酷いものだった。
「どうした」
「はは…少し街で絡まれてね。何て事は無いよ」
「奴隷など誰も助けてくれぬだろうな」
男の顔が見るからに強ばったのがわかった。
こいつの笑顔を見る度に俺は苛々していたが、その理由は前からわかっていた。
「お前はそうして表面上で笑顔を取り繕っているが心の中では憎悪や悲しみ、嫉妬で渦巻いているな」
この男は笑顔を顔に貼り付けて心優しい人間を偽っているだけだ。
人間の目は欺けても俺の目は欺けない。
もとより悪魔は人間のそういった仄暗い心を好むのだ。
こいつが俺に執着するのもそれが根源にあるからなのだろう。
「綺麗に生きていきたいのか?そういう所こそが汚いな、その薄皮1枚剥がせばお前の中身はへどろのようだ」
「っ…」
図星を突かれた男はきっと突きつけられた現実に耐えきれなくなり俺に魂を売り渡すだろう、そう思った。
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