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「悪魔と友にさせる神がいるか、阿呆め」
こいつといると何だか自分が悪魔だということを忘れてしまいそうになる。
「また明日ね、ヴァル」
だがそう言って帰っていった男は、次の日から突然俺の前に現れなくなった。
現れない男を待つうちに、俺の翼は気がつけばさっぱり元通りに戻っていた。
何度か翼を広げたり閉じたりを繰り返す。
この調子なら魔力にも問題は無いようだ。
「…」
あの男は今日も来ない。
このままここを去るのもいいが、俺にあそこまで手を煩わせた人間はあれが初めてだ。
癪なのでどうせなら魂を喰らうことしよう。
「ただ、癪なだけだ」
あの男を気にしているわけではない。
そう自分に強く言い聞かせて不可思議な胸のざわつきを抑え込んだ。
男の気配や匂いを感じ取り、魔力を使い一気に場所を移動する。
「…ふむ、力にも問題ないな」
景色がぐにゃりと曲がり、俺は薄暗い森から腐りかけの木材で出来た掘っ建て小屋の中に立っていた。
目の前には鉄の柵がありどうやらここは牢になっているようだ。
そして俺の足元に、汚いものが転がっている。
あの男だった。
「死んだか」
「う…」
俺が声をかければ転がっていた男が少し身じろいだ。
うつ伏せの状態から上を向いた顔はいつも以上に蒼白だった。
「…ヴァル…?」
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