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悪魔と奴隷男
悪魔は人の心を蝕み闇に堕とす。
それが俺という存在。
俺は生まれた時からそれしか知らない。
「…折れたか」
自らの背から生えた黒い翼を見つめ俺は地面に座り込む。
少しばかり手練れの悪魔祓い師の攻撃に遭い、森に落ちて翼を傷つけてしまった。
これでは当分動けそうにない。
「しばらくここに…」
この程度の傷ならば、大人しくしていればすぐに治るだろう。
攻撃を受けた状態でも山三つは超えたのだ。
あの悪魔祓い師が此処まで追ってくることはないだろう。
なに、少しばかり眠れば時などあっという間だ。
そう思い瞼を下ろしかけた時、近くの茂みから枝を踏み鳴らす音が聞こえた。
「…っ」
「そこに誰かいるのか?」
身構えた俺に話かけてきたのは悪魔払い師でも山の獣でもなく一人の男だった。
「あ…」
男は俺の姿を見てそのやせ細った体を震わせた。
悪魔の姿を初めて見たのだろう。
「…君は…」
「失せろ人間」
低い声でそう脅してやれば男は恐怖しもとより悪い顔の色を更に青くさせた。
「怪我を、してるのかい…?」
男は震える唇でそう呟き、俺が動けないことに気が付いて少しづつ歩み寄ってきた。
「近寄るな」
「羽が折れている」
「どこかへ消えろ。穢らわしい。殺してしまうぞ」
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