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勘違いから始まることもある
「意外。料理美味いんだなあ」
そう言って骨までしゃぶって食べ終えたのを、私はどう言ったものかと考えた。
ギラギラした男性か既婚者しかいないうちの部署では珍しい、爽やかな人気者の彼と接点を持てたのはありがたいけれど、それをつくったのは私じゃないのに。でも説明したらちょっとだけ長くなるから、私は「はあ」と気のない返事をすることしかできなかったのだ。
住んでいるアパートのお隣さんは、お母さんになったばかりの奥さんで、お子さんがいるせいか、毎日毎日私のほうに挨拶に来る。
「すみません、うるさくないですか?」
赤ちゃんは泣くのが仕事だろう。私はそれに首を振っていると、彼女は心底ほっとした顔をしてくれた。私は仕事がシフト制だから、昼間にいることも多く、なかなか外に出られない彼女の代わりに赤ちゃんの面倒を見てあげたり、買い物をしてあげることも多かった。
そんな中、奥さんは「いつもこの子の面倒を見てくれるから」と、煮物をくれた。
「圧力鍋でつくったんで、そんなに時間はかかってないですよ」と言って、トロトロにとろけた鶏肉を半分ごちそうしてくれた。
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