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謝りながら薄紙を作業台に広げ、トルソーからスーツを脱がせます。
「いえ、そんな、いいんです……」
言いながらも、はあ、と大きな溜息を吐かれます、お疲れなのでしょうか。
「こんな時間までお仕事とは、大変ですね」
「ええ、まあ……ご飯を食べられてラッキーとは思いますが……」
言って、また、はあ、と溜息を。
「でも落ち着いて食べられませんね」
「ええ、まあ……味はよく判らない事が多いです、美味しいですけど」
はあ。
「そして明日は緊張を強いられるプレゼンですか」
「ええ……準備万端とは言え……」
はあ……。
「あの。大丈夫ですか? 大変お疲れの様ですが。きちんと休みは取れてますか?」
思わず包む手を止めて、俯き加減の深田様を覗き込みながら聞いてしまいました。深田様ははっと顔を上げて、とびきりの笑顔を浮かべてくれます。
「えっ、あっ、済みません、いえ、疲れているか疲れていないかと言われれば、疲れてないと言うのは本当で……はぁ」
溜息を吐き、大きく項垂れます。
「どうかされたんですか?」
促すと、深田様は小さく頷いてから話し始めてくれました。
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