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きょとんとされる深田様に店の奥を示しました、ソファーがある場所です。
そこにはバケツに入った花束が四つもあるのです。
「──ああ、いい香りがすると思ったら」
「見事でしょう」
その場所まで深田様を案内しました。
「いただいてもいいんですか? 藤宮さんがいただいたものでは?」
「構いません、みなさんも余り過ぎて困って私に譲ってくれたのです。もしお役に立つのならばその方が花も幸せだと思います」
私の言葉に、深田様は頷いてくれました。
「奥様が好きな花はありますか?」
「サンダーソニア、好きだって言ってた」
「サンダーソニア?」
田淵様がお持ちになった花束に入っていた黄色い花を指さしました。鈴蘭のように下向きに花が開いています。
その花束を抜き出してみましたが、いくつかの花は、少ししぼんで見えました。
「この薔薇は今日、摘みたての様です。こちらと合わせてみましょうか」
田淵様の花束を解き、薔薇と組み合わせます。それだけでは淋しいので花束からレザーファンやギボウシなどのグリーンも抜いて入れました。
更に他の花束も解き、ラナンキュラスやブルースター、かすみ草、グロリオーサリリーを加えます。
おやおや、私でも両手で持たないと持ち切れない程の花束になってしまいました。
「どうでしょう?」
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