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「別れはすんだか」
「・・・・・・」
さんざんに泣かれた。泣く莉子を振り切って、心を鬼にして振り返らないように近くで待っていた高宮さんの車に乗り込んだ。
俺の荷物はボストンバック一個。それから兄妹三人で撮った写真。
「このまま職場につれてくぞ」
「・・・・・・」
「返事くらいしろ」
「・・・はい」
「そっからは、そっちの人間に従え。給料日の日に、その月の返済分取り立てにいくからな。逃げんなよ」
「はい」
「まぁ、それまでもちょこちょこ様子見に行ってやるよ」
来て要らない。なんてことは言えなかった。怖い、とかではもうなく、そんなことを歯向かう気力ももうなかった。この車は絶望に向かって走ってるみたいだ。俺をささやかながら幸せだった日々から遠ざけていく。
思わず流れた涙を悟られないように視線を窓の外へと移した。
「安心しろ、そういう店だがちゃんとした店だ」
何が安心なのかわかららない。そういう店にちゃんとしたもしてないもないだろう。自分の体を商品にして売り出す。それがどういうことなのか、わからないほど子供じゃない。
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