◆儚く散る願い◆

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「兄弟三人が何事もなく幸せに暮らせますように」  一月二日。新年が明けて一年元気に過ごせますようにと初詣でお願いをする。今年は念入りに。念入りにお願いをした。 「ひろちゃん! おねがいしたぁ?」 「うん。したよ。莉子もちゃんとできた?」 「うん! ちゃんとね、おねがいしたよ!」  元気よくそう言った妹の莉子(りこ)は六歳。莉子の頭を撫でて誉めてやる。もう一人はどこにと振り向くと、すでにお願いを終えて甘酒をもらいにいっていた。 「都亜(とあ)! はぐれるなよ」 「この小さい神社のなかで迷子になんかなるかよ」  ふぅふぅと、息を吹き掛けながら甘酒を冷ます弟の都亜は十三才で今年度中一になった。月日がたつのはあっという間だ。ついこの間都亜がランドセルを卒業し中学生になったというのに、すっかり中学生も板につき始めてきたし、まだ子供だって思っていた莉子だってあと三ヶ月もすれば小学生だ。  子供の成長は目まぐるしく、この成長をどうしてみていきたいと思ってくれなかったんだろうと悲しくなった。
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