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「母は、本当に血眼になって俺たち二人を育ててくれた。働いて働いて、しまいには体を壊して呆気なかった」
「そうだったんですか」
「辛くても、苦しくても、キョウダイのために必死に働こうとするお前を見て、母を思い出した」
無理をして、憲吾さんに怒鳴り付けられたことがある。もしかして、あの時倒れたお母さんのことを思い出したんだろうか。
「愛している、尋人。そばにいてくれ」
「はい・・・・・・。俺も、愛しています。そばにいさせてください」
ねぇ、憲吾さん。俺ね、もう今は両親が借金を残して消えたこともう恨んでも怒ってもいないんだ。
だって、そのせいで苦しいことも辛いことも、たくさん経験したけど。でも、そのお陰で俺は憲吾さんに出会えて今こんなにも幸せに浸れているんだから。
俺は、そう思うんだよ。
でも、憲吾さんにそう言うときっとバカだなって傷ついたように笑うから。俺の痛みを自分の痛みみたいに感じてしまう憲吾さんだから。傷ついてないって伝えたいけど、そう言えば言うほどに憲吾さんは気にするってもうわかったから。言わないんだ。
だから、他のことで一杯幸せ伝えるから。
憲吾さんといて幸せだって伝えていくから。
覚悟しといてね。
そうそう。
憲吾さんが最後まで隠してた都亜の恋の相手が、まさかの弟の高宮さんってことは、また別のお話ーー。
おわり
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