738人が本棚に入れています
本棚に追加
幼稚園が冬休みの間は俺がバイト中、都亜が莉子の面倒を見ないといけなくなる。友達と遊びたいだろうに申し訳ないけど頼るしかない。
両親が蒸発した。その事実は、回りにバレるまで隠し通していきたかった。俺はもう成人しているし、二人の面倒も必死にやればなんとか見れると思っていたし、そういうことは、恥ずかしいことだって思っていた。
”親に捨てられた子供”というレッテルを、俺はいいけど二人に背負わせたくなかった。
でも、俺のその思いはただのエゴだったのかもしれない。
『兄ちゃん、助けて! 怖いよっ』
スマホにそんな連絡が来たのは、バイトが終わった夕方18時。すっかり外は暗くて、マフラーを首に巻いて自転車に跨がりスマホを確認したときちょうどかかってきた電話だった。
怯えた様子の都亜に、事情を聴くと借金取りらしき人が玄関で騒いでいるらしい。莉子は怖くて泣いてしまって宥めることができないし、都亜自身も怖くてどうしようもないと訴えた。
自転車を走らせ、必死にアパートに向かった。なんでこんなときに。自分がいないときに来るんだ。
どうか、どうか間に合って。
自転車を放り出し、玄関前に向かうと人はもういなかった。ポケットから鍵を取りだし中に入ると、中は真っ暗で静まり返っていた。
借金取りにつれていかれたんだったらどうしよう。背筋にゾッとしたものが走る。震えた手で電気をつけると、体を寄せあい眠る二人の姿があった。
「よかった・・・」
「ん、・・・兄ちゃんっ!」
明るさに目が覚めたのか都亜が俺を見て泣きそうな顔で声をあげる。とても怖い思いをさせてしまったんだろう、顔色が悪い。
最初のコメントを投稿しよう!