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「割りのいい仕事紹介してやるよ」
「え」
「お前の体を売ればいい」
「体を、売るって・・・」
そういう、店で働くってこと?
「そ、そんな」
「仕事を選べる立場か? いっただろ。こっちだって慈善事業じゃねぇって。金がねぇなら作るしかねぇだろ。親の不始末だろうが、こっちは貸したもん返してもらえるならいいんだ」
「・・・・・・か、考えさせてください」
「一晩だ。それ以上は待たない」
借金取りの男はそういうと俺に名刺を渡して行ってしまった。その名刺には”高宮竜二”と書いてあった。
ずっと緊張しっぱなしだったからか、歩き出そうとするとふらついた。
体を売る。俺に、そんなことできるんだろうか。
そんな経験自体ない。そんな俺が、体を売る?
でも、そうするしか金を作る道はない。バイトの時給はたかが知れてる。今でギリギリだ。むしろ足りないくらい。
だとしたら、本当にその道しか残されていないのかもしれない。
「どうしよう・・・・・・」
絶望しか残されていない気がした。どう考えたって、返済できる道なんてそこしか残されていない気がして。自分が覚悟を決めなければ。
二人を守るために。そのために、俺はなんでもする。
両親がいなくなった日、俺はそう心に誓った。
だとしたら、もう。
答えは決まっているじゃないか。
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