◆儚く散る願い◆

9/33
前へ
/221ページ
次へ
「割りのいい仕事紹介してやるよ」 「え」 「お前の体を売ればいい」 「体を、売るって・・・」  そういう、店で働くってこと? 「そ、そんな」 「仕事を選べる立場か? いっただろ。こっちだって慈善事業じゃねぇって。金がねぇなら作るしかねぇだろ。親の不始末だろうが、こっちは貸したもん返してもらえるならいいんだ」 「・・・・・・か、考えさせてください」 「一晩だ。それ以上は待たない」  借金取りの男はそういうと俺に名刺を渡して行ってしまった。その名刺には”高宮竜二(たかみやりゅうじ)”と書いてあった。  ずっと緊張しっぱなしだったからか、歩き出そうとするとふらついた。  体を売る。俺に、そんなことできるんだろうか。  そんな経験自体ない。そんな俺が、体を売る?  でも、そうするしか金を作る道はない。バイトの時給はたかが知れてる。今でギリギリだ。むしろ足りないくらい。  だとしたら、本当にその道しか残されていないのかもしれない。 「どうしよう・・・・・・」  絶望しか残されていない気がした。どう考えたって、返済できる道なんてそこしか残されていない気がして。自分が覚悟を決めなければ。  二人を守るために。そのために、俺はなんでもする。  両親がいなくなった日、俺はそう心に誓った。  だとしたら、もう。  答えは決まっているじゃないか。
/221ページ

最初のコメントを投稿しよう!

738人が本棚に入れています
本棚に追加