骨、飢餓、チョコ

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「なぜ?」と女神は尋ねた。「あなたが天国に行くようにお願いをすれば、あなた自身でその子にチョコを渡せるでしょう。私はこの地獄から、あなたを連れ出すことができます」  碧は首を振った。 「それはできません。僕は、小春のためにここに居続けないといけないから……」  彼は道中で、遂に思い出していた。あの最期の時を、そして、地獄に堕ちた理由を。  炎の海、降り注ぐ破壊の光の粒子。碧と小春は抱き合っていた。もう数分もせずに、二人は焼き尽くされて、一握の灰になるだろう。  結局、彼はお返しを渡しそびれてしまった。 「あの時僕は、ふと願ったんです。せっかく用意したチョコは小春に渡せなかったけど、違うお返しならできるんじゃないかって……このまま二人とも死んでしまって、もし二人とも地獄に堕ちることになるなら、僕が小春の分まで地獄を彷徨うから、代わりに彼女は天国に行って欲しいって……」  光はますます薄くなり、女神の顔の輪郭がはっきりとしてくる。 「もうずいぶん長いこと、この地獄を歩き続けました。どこにも小春はいませんでした。きっと、僕の願いが通じたんだと思います。彼女はきっと天国に行きました。それなら、僕は願いが叶った分だけここにいなければなりません。でも、たぶん彼女は寂しがっていると思います。それに、やっぱりせっかく買ったものだから彼女に渡したい……」  そこまで話してから碧は少し俯き、息をのんで、搾り出すような声で頼んだ。 「お願いです。天国の小春に、僕のお返しを、どうか届けてください」
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