骨、飢餓、チョコ

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 ひときわ大きな骸骨の山を登った後、碧は一息ついていた。眼下には白い大地。頭上には紫色の大気。いつもと何も変わりがない。    少し前に、何人か他の人と出会った。みんな碧と同じように無言で、目は虚ろで、ボロボロの服を着て、今にも倒れそうなほどに覚束ない足取りで、ひたすらに歩みを続けていた。  そして、いつの間にかいなくなっていた。  彼らは、何者だろうか? やはり、彼らも地獄に堕ちた人間なのだろうか? その罪は何だったのだろうか? 彼らは何を考え、どこへ向かっているのだろうか……  埒もないことを思案しつつ、ぼんやりと座り込んでいた碧は、突然、ある強烈な衝動に突き動かされた。  猛烈な飢餓感。  腹を抑え、呻吟する。この堪えきれないほどの飢餓は定期的にやってくる。何もかも考えられなくなり、身体の自由は奪われ、五感すら喪ってしまう。それは回を追うごとにますます酷くなっている。  碧はカバンを開けると、何か食べられるものはないかと、乱雑に中身を取り出し始めた。ノートに教科書、財布、文房具、スマホ……  最後に出てきたのは、大きな平たい箱だった。まだ未開封の箱。上質の茶色の包み紙には、凝った意匠のエンブレムが印刷されている。  それは、中身がチョコのアソートであることを示していた。  血走った目で碧は箱を見つめ、熱に魘されたような手つきで包み紙を破ろうとした。  だが、次の瞬間には動きを止め、深呼吸をし、箱をそっとカバンへと戻した。  このチョコは、決して食べてはいけない。  彼は代わりに、ノートのページを一枚破り取って丸めて口にねじ込むと、ゆっくりと咀嚼し始めた。これで、飢餓が去るまで耐える。  半時間も経っただろうか。碧は、また歩き始めた。
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