骨、飢餓、チョコ

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 歩きながら碧は思う。  なぜ、このような地獄へと来てしまったのか? この、地獄にしては至極平凡な地獄へと。  罪を犯した記憶はない。罰を受けなければならないほど、呪われた存在だとも思わない。  地獄といえば、彼が覚えている限り、死ぬ直前の世界のほうがよほど地獄だった。  その日の朝、空が突然閃光に満ち溢れ、地表に無数の光の粒が降り注いだ。粒はあらゆるものを穿ち、発火させ、灰へと変えていった。  空に呼応して、大地も唸り声を上げて人間に襲いかかった。無数の地震、無数の地割れ、噴出する炎とマグマ……  ある宗教を信ずる人からすれば、あれはさしずめ「最後の審判」というところだろう。  原因など分からないが、人類が滅び去ってしまったなら、その究明などもはやどうでも良いことだ。  しかし、彼には一つだけ、気がかりなことがあった。  自分がどうして死んだか、それだけが思い出せない。  最期に何を思い、何を欲して死んだのか……何を為したのか、何を叫んだのか。  そして、小春(こはる)には会えたのだろうか?   大好きな小春、笑顔の眩しい、元気一杯な小春。彼女と一緒に最期を迎えられたのだろうか?  もう何度目になるか分からない疑問を飽きることなく反芻しながら、碧は地獄の大地を行く。足を引きずり、飢餓に悩まされながら。
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