骨、飢餓、チョコ

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 高校生になっても、碧と小春は一緒だった。もともと成績の良くなかった小春だが、一生懸命勉強をして碧と同じ高校に入学した。  中学生の頃とは違って、小春は少し大人しくなった。何か劇的なきっかけがあったわけではない。おそらく、肉体が成長するにつれて、精神がそれに釣り合う形で成熟したのだろう。  それでも、彼女は碧と離れることはなかった。  それに対して碧は、あまり変化らしい変化はなかった。中学生の頃と変わらぬまま、一人物静かに教室の片隅で本を読んでいた。ただ、以前ならば月影のような陰気さを醸し出していた彼の表情は、高校生になってからは幾分か明るくなっていた。  小春がいたからだろう。  高校二年の二月十四日、帰り道、薄い夕陽の中で、小春は碧に小さな箱を渡してきた。中身は手作りの、ハートの形をしたミルクチョコだった。 「……ねぇ、この場で食べて! 他の子たちは、家でゆっくりと味わって食べてほしいって言うかもしれないけど、私はこの場ですぐに感想が聞きたいの。あおちゃん、お願い。ここで食べて!」  少しは大人になったのかなと思っていたが、子供らしいせっかちさはまだまだ残っていると内心呆れつつ、碧はチョコを口に運んだ。  上品で、甘さは控えめだった。碧は、初めて味わう滋養を舌に感じた。 「それって、たぶん愛の味だよ!」  小春がにっこりと笑って言った。
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