その少女、自由につき

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~*~ 「…それでフロウちゃん、どうしてここに?」 竜人のことを間が悪く取材に来た記者が扉を潜って行ったのを見届けてから、受付嬢のヒーリア=エレクセンは笑顔のままフロウと呼んだ少女に声をかけた。どうやらここへやってきたのとほぼ同時に、あの記者の男が来たらしい。 「え?遊びに来ただけだけど」 「そうか、『また』なんだね。定期便が来る時間帯じゃないし、時間的にさっきドラヘインゼルから荷物が納品されたばかり。それを鑑みると…」 「な、なんのことカナー?」 ベテラン職員のグイード=ジルバが腕組みをしながら詰め寄ると、フロウはカップを持ったままたじろいだ。 「あのなぁ、何度もやられちゃもう庇い立てできないぞ。その度にあの盾持った堅物に嫌味言われるのは俺達なんだぜ。それ飲んだらさっさと帰りな」 「アーディひどい!ケチ!」 フロウは頬を膨らませながらカップを傾けた。中を満たすのは黒い液体…コーヒーだ。まだどう見ても幼いのに、ブラックを嗜めるらしい。 「はー…おいしいねえ。島にもこれあればいいのに」 「横に喫茶店あるし、そっちの方がおいしいと思うよ?」 「…ここだとタダで出るから…お小遣いなくて…」 「下心丸出しじゃねえか。お茶会はよそでやってくんな!」 アーディは一つ腕まくりをすると、椅子ごとフロウを持ち上げてカンパニーの外に追い出した。そして後ろで扉が閉じられるのを感じながら、フロウは不機嫌そうな顔をした。 「んんんん…もーっ!あたしはただみんなと遊びたいだけなのに!つまんないー!」 一しきり暴れるが、誰も構ってくれる気配がない。仕方がないのですっかり冷めてしまったコーヒーを飲み干すと、ワンピース状の衣装の裾を払いながら椅子から立ち上がった。 「しょーがない。見つかるまで観光とかくれんぼといきますか!」 そう、少女の名は『フロウ=クラウディア』。 大空を宛てもなく漂う雲のように、世界の果てまで駆け抜ける風のように。 常識を常に上回る自由奔放な竜人の少女は、今日も首都観光に精を出すのであった。
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