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男の姿がいきなりぐらりと歪み、瞼が異様に熱くなる。痒い。瞼がほろりとろけ落ちてしまいそうだ。視界に黒いもやがぷつぷつと湧き出す。それは植物のように伸び、絡み、一瞬にして目の前が真っ暗になる。
「私は尖ったものを伸ばす力がありましてね、貴方の睫毛をモサモサに伸ばしてみました。これで貴方は目が見えない。私の手から逃れることは不可能。大人しく捕まってもらいますよ」
「……お前も超能力をもっているのか」
「それは私が逆さまに立ってたときに言うセリフですよ。超能力……というより魔術ですかね。棘棘術、なんて言っても貴方には分からないでしょうけど」
「ふ、なんだか知らんが、ちょっと目を潰すくらいで、俺を止められると思うな!」
「……!」
刹那、緩利の体が消失する。
椅子の深紅のシートにはくすんだように汚れた白が混じり、彼が座っていた場所には大きな穴、流れるレールと枕木の茶が覗いている。
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