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全体的に長細い男だ。腕も脚も、鼻も耳も輪郭も、体のパーツが全部長細い。昆虫のナナフシに似ている。服は明るい黄緑一色。空飛んでる永遠の子供みたいだ。あんなに可愛くないけれど。
「……お前も棘棘術の使い手か?」
「まーな。気づいてなかっただろーけど、今日ずっとあんたにひっついてきた。あんた、変質系の術を使うらしいな。雲風百蒲術の。ボクも変質系だ」
ナナフシは石を拾うと、ぽんっと放り投げた。煌めく陽光を受けながら、その丸い石は生き物のように蠢く。柔らかいチーズのように伸び、尖り、それは鋭利なナイフとなってナナフシの手に収まった。
「大人しく捕まってくれたら痛い目に合わずに済む」
「なんだ、脅しのつもりか? そんなナイフ、俺の術ですぐに使い物にならなくなる」
「ふん」
一瞬、石のナイフが黒々と煌めくのが見えた。次の瞬間、右頬に冷たいものが走る。
「変質系ってのは目的の物体の位置を正確に知らなきゃ発動できない。ボクみたいに素早いナイフ捌きが可能な相手には不利だね」
痛みがじわじわと湧く。右頬に熱い液体が、たらりと流れ落ちる。
切られた? あの一瞬で?
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