サンタクロース

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 飛行機は何のトラブルもなく東京に降り立った。ここからホテルに移動して、五郎さんの体力を確認する。大丈夫そうならタクシーを拾って廃墟の近くまで乗せてもらう。駄目そうなら今日は休憩。僕は観光を楽しもうと思っている。 「五郎さん、体力は大丈夫ですか?」 「んー……まあ、いけるだろう」  ホテルに到着してすぐ五郎さんに体力の有無を聞いたが、なんとも曖昧な返事だ。本当に大丈夫だろうか。 「五郎さん、無理してません?」 「いやいやしてないよ。ほら、荷物置いて行こう。廃墟は日が傾いたら危ないぞ」  五郎さんは荷物を部屋の隅に置いて外に出る。僕も荷物をベッドの近くに置いて早足で歩く五郎さんを追いかけた。なんだろう、少し不安になってきた。幽霊だけを見て帰れたら良いが……。  ホテルを出て適当なタクシーを捕まえる。廃墟よりちょっと遠い場所で降ろしてもらうのは通報されないためだ。廃墟の中に入るのは不法侵入になるだろう。僕達が降りた後に通報しない確証はない。考えすぎかもしれないが、念の為だ。  辺りに人はいない。これなら誰かに見られる心配はないだろうが、一応周りを確認しながら歩く。必要であれば遠回りもするつもりだ。 「おっ、見えてきたぞ」 「思った以上にボロいですね……」  東京はのどかな田園風景とは無縁と思いがちだが、少し離れると畑が広がる場所に出る。人の気配はないに等しいが、たまに一軒家がポツンと建っている。  そんな場所に例の廃墟はあった。風化でボロボロになったうさぎの絵が若干怖い。錆びているだけなんだけど、目から血が流れているみたいだ。描かれた当初は可愛かったのだろうが、今は見る影もない。 「はー……やはり廃墟は良いなぁ……体力も回復する。ここは周りの雰囲気とも合ってる。俺の中でも上位に入るぞ」  残念ながら僕にはその素晴らしさは分からない。あの部分は壁が崩れそうだとか、蜘蛛の巣がたくさんありそうだなぁぐらいしか頭に浮かんでこないが、年を取れば理解できるようになるのだろうか。  それはそうと、やっぱり疲れてたんじゃないか。体力が回復したと言っているが、人の体はそう簡単に回復はしない。でも、ここまで来てしまったからにはしょうがない。様子を見つつ、駄目そうなら引っ張ってでもホテルに戻ろう。
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