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今いる場所は一部の壁や天井が崩れているからちょっとだけ日差しが入っている。おかげで小さな懐中電灯一本の光でもなんとかなるが、ここから奥は外の景色が見れるほど崩れていない。光で照らしてみても吸い込まれてしまうほどの暗さだ。だが、ありがたいことに人の目は暗闇に慣れる。歩いていると徐々に見えるようになるだろう。
はぐれないように五郎さんと並んでゆっくり奥へと進むと、目が少し慣れてきた。歩きつつ周囲を照らしてみると白い物がいっぱいある。よく見ると、それは赤ちゃんのおむつだった。ベビーグッズは全体的に白い物が多い気がするが、その方が汚れが目立つからだろうか。汚れたままだと衛生が問題になる。赤ちゃんはデリケートだから清潔さを保つのは重要だ。そう考えると、白い物が多いのも頷ける。
更に進むと突き当りが見えてきた。周りはベビーカーの残骸があちらこちらに転がっている。ぬいぐるみ、レゴブロック、ベビーグッズ……ここまでは小学校に上る前の子供達を対象にした商品が多かった。もっと周囲を調べれば知育おもちゃや絵本もあると思う。
そういえば、とここまで歩いて気づく。
「ガラガラがない……?」
そうだ、テレビで見たガラガラを見かけていない。見逃したのだろうか。もう一度入口まで戻って確認したいが、せっかくここまで来たのに引き返すのは面倒だ。
「どうした?」
「ああ、えと……ガラガラ見てないなと思いまして」
「見逃したんじゃないか?」
「やっぱりそうですかね」
「あっそうだ! ガラガラならこの辺のベビーグッズ照らせばあると思うぞ」
「確かにそうですね。ちょっと見てみます」
ベビーグッズコーナーを照らす。おむつに哺乳瓶におしゃぶり……離乳食もあるが、期限はとっくに過ぎているだろう。
一つずつ照らしていくも目的のガラガラは見つからない。他の赤ちゃん用のおもちゃはあったのに見事にガラガラだけがない。同じ種類のが一つでも見つけられれば、僕の家にやってきたガラガラがここから持ち去られたのかが分かるのに。まあ、まったく関係ないところからの可能性もあるが、僕は十中八九ここだと思っている。
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