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「う~ん……ありませんねぇ」
「誰かが回収したんかね?」
考えられるのは浮浪者だ。以前、フリーマーケットで出会った少女が、ボロボロの服を着た人に押し付けられたと言っていた。僕達が来る前にそいつが全部回収してしまったのだろうか。でも、なぜガラガラだけを……理由は分からない。
「もしかしたらここのコーナーじゃないのかもしれません。先に進みましょう。まだ幽霊にも出会ってませんし」
今はガラガラのことより、幽霊を目撃することを優先しよう。僕達はベビーコーナーをあとにし、更に奥へ歩を進めた。
ベビーカーの次はスポーツ用品が置いてあるコーナーだった。サイズがかなり小さいから初めてスポーツを行う子供達用のコーナーだということが分かる。運動が苦手だった僕はスポーツ用品とは縁がない。馴染みがあるのは補助輪付きの自転車ぐらいだ。そんな僕とは対照的に、五郎さんは「懐かしいなぁ!」と笑いながら、野球のグローブやサッカーボールを触っている。僕はあまり興味ないから、五郎さんと大きく離れないようにしながらスポーツコーナーの先を照らしていた。
「この先は……スタッフルームかな?」
懐中電灯を上の方に向けていると、劣化して読みにくくなっているが関係者以外立ち入り禁止と書かれている扉があった。
「何かあったかぁ?」
「たぶん、スタッフルームです。鍵がかかってなければ入れると思います」
「よし、行ってみるか」
「もう良いんですか?」
「いつまでも懐かしんではいられないからな」
扉の周辺に障害物はない。ここまでは瓦礫や商品が落ちていたが、不自然なほど床には何もなかった。
扉を軽く押してみると、耳に障る音を立てて簡単に開いた。冷たい空気が流れてくる。懐中電灯で中を照らして、危険がないことを確認する。中に入ると、僅かに食べ物の香りがすることに気づく。ほとんど消えかけているが、最近まで使われていたことが分かる。
「なんか食べ物の臭いがしますね」
「んんー? そぉかぁ? 俺は、鼻が悪いからちょっと分かんねぇ」
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