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お腹が空く臭いであるのは間違いないが、色々混ざっているせいでいまいちピンとこない。ラーメン、カレー、ハンバーグなど、子供が好きそうな臭いだと思うが……。臭いの正体を突き止めようと、くんくんと犬みたいに嗅いでみる。ちょっとだけ甘い臭いがする。
「あっ、おい植田。この辺ちょっと明るくしてくれ」
五郎さんが何か見つけたようだ。言われた通り懐中電灯を五郎さんが指す場所に向けると、カップラーメンがいくつか転がっているのを見つけた。どれも空になっている。生活用品もあるのだろうか。更に奥へ行くと、段ボールと安っぽい布団があった。
「ふーむ……ここに住んでるやつがいるのか。大方ホームレスなんだろうけど、もしかしたらここにあるおもちゃを売って生計を立てているのかもな」
ガラガラは売れなかったから適当な人に押し付けたのかな。もしくは幽霊が憑いてるのを知ってて押し付けたとか……想像を巡らしてみるが、これだと思える答えは出ない。
「特に変なものはありませんね。出口の方まで歩きましょうか」
「そうだな」
他に変わったところがなかったので、スタッフルームを抜けて出口の方まで歩き始める。ここまで来たのに幽霊とは遭遇していない。こういう雰囲気だから見間違えたのかもしれない。スタッフルームに住んでいたホームレスを幽霊と思った可能性もある。怪我にしたって、廃墟を歩いていたら一つや二つ傷ができるし、運悪く頭を打ってしまうこともあるだろう。
この時の僕は気持ちが楽になっていた。観光気分になっていたと言っても良い。
しかし、出口まで来た時、僕達は見てしまった。
胴体から離れた頭部、身にまとっているボロ雑巾のような服から覗く臓器を。先ほど嗅いだ甘ったるい臭いは死臭だったのだ。スタッフルームで殺されて、ここに転がされたのだろう。
「……っ!」
ふと視線を感じて出口の方を見る。
サンタクロースだ。
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