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「おい、起きろ。居候の身でいつまで寝ているんだ」
その少女を拾ったのは、三日前のことだった。
拾ったというと言葉が悪いようだが、実際に家の前に倒れていた所を拾ったのだから他に言いようがない。商売を終えて家に帰ったら、そこでうつぶせに倒れていたのだ。
ヘキサ、という名前らしい。
赤い癖っ毛をした背の低い子で、薄汚れたマフラーをしていたが服は仕立てのよいもののように見えた。放っておくこともできず、ヘキサを家にあげたはいいが、
『これも何かのご縁。まずはご飯といたしましょう』
そう言って腹を鳴らした。
この少女は貰うものは貰い、貰えないものもせびり、返すものは返さないという実に良い性格をしている。助けたことは間違いであったと一日目で気づき、二日目には商売に出る自分を見送り家で一日中寝た末に食事をせびる姿に生かしておけぬと思った。
「ふあぁ……これは、旦那さま。おはようございます」
「おはよう。今日はお前に話がある」
「朝ごはんでございますね。さて、今日は魚と出るか肉と出るか」
「違う、朝食はまだだ」
「では、も少し寝ますので出来たら起こしてください」
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