奇剣 かやりの風

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 家主のフェンフへ背を向けて、くうくうとヘキサは寝直し始める。 「起きろ」 「んん……できましたか、一瞬の様でした」 「お前、少しは思うところがないのか。乞食でも掃除くらいするぞ」 「旦那さま、そのお話はご飯の後にいたしましょう」 「あほ! だいたいなんで毎度毎度飯が食えると思ってるんだ」 「そう言いつつも食事の支度に取り掛かる所が結構でございますね」  黒パンをスープに浸しながら食べはじめる頃になって、改めてフェンフは話す。 「今日はカボチャを売りに行こうと思う」 「んぐ、ぐ、固いですね三日目は。今日は新しくパンを焼いてください」 「カボチャを売りに行く」 「んっ、んっ……ぷはっ、聞きましたが」 「お前も来い」  キャベツの漬物を口に押し込みながらヘキサは首を横に振る。 「いや、なぜお前に拒否権があると思っている」 「旦那さま、いくらわたくしでも聞けるお願いと聞けないお願いがあります」 「野菜売りくらいやれ」 「わたくしともあろうものが、はしたないではございませんか」 「お前、商いというものを何だと……」 「ともかく、そんなことを仰るのなら出て行ってしまいますよ」 「いや、出ていって困るのはお前だろう。なぜ交渉材料になると思っている」 「わたくしがいることで日々に潤いがあるでしょう?」     
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