5人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
家主のフェンフへ背を向けて、くうくうとヘキサは寝直し始める。
「起きろ」
「んん……できましたか、一瞬の様でした」
「お前、少しは思うところがないのか。乞食でも掃除くらいするぞ」
「旦那さま、そのお話はご飯の後にいたしましょう」
「あほ! だいたいなんで毎度毎度飯が食えると思ってるんだ」
「そう言いつつも食事の支度に取り掛かる所が結構でございますね」
黒パンをスープに浸しながら食べはじめる頃になって、改めてフェンフは話す。
「今日はカボチャを売りに行こうと思う」
「んぐ、ぐ、固いですね三日目は。今日は新しくパンを焼いてください」
「カボチャを売りに行く」
「んっ、んっ……ぷはっ、聞きましたが」
「お前も来い」
キャベツの漬物を口に押し込みながらヘキサは首を横に振る。
「いや、なぜお前に拒否権があると思っている」
「旦那さま、いくらわたくしでも聞けるお願いと聞けないお願いがあります」
「野菜売りくらいやれ」
「わたくしともあろうものが、はしたないではございませんか」
「お前、商いというものを何だと……」
「ともかく、そんなことを仰るのなら出て行ってしまいますよ」
「いや、出ていって困るのはお前だろう。なぜ交渉材料になると思っている」
「わたくしがいることで日々に潤いがあるでしょう?」
最初のコメントを投稿しよう!