プロローグ

3/4
前へ
/6ページ
次へ
──全てが静まり返った魔王城の謁見の間。 動く者はおらず、しかし動く物はあった。 砕かれた管理結晶は壊れていなかった。 管理結晶は魔の者を産むその役割を果たすため、砕かれた破片を世界中へと飛散させた。 飛散した破片は世界各地で【ヤンドゥール】を作り、規模は小さくなったものの魔の者を産み出すことに成功した。 管理結晶には糧が要る。 魔の者が人を食した後に発する障気が。 ──人を、この楽園に。 魔王城に残る大破片の管理結晶は、最大規模の【ヤンドゥール】が崩壊する前に、内在するあらゆる道具・武具・防具を取り込んだ。 そして、世界各地へ散らばった破片へと、命令と共に転送した。 ──人への餌を、この楽園に。 大戦終結より千年。 人々は魔物の素材と、 時折現れる宝箱からのアーティファクト、 そして名誉を求め、【ダンジョン】へと潜り続ける。 『勇者』が持っていた、アイテムボックスは未だに誰の手にも渡っていない。 無限に物を収納する能力を持つアーティファクト。 時の流れもなく、全て劣化させることなく保存する。 魔王とともに散った『勇者』がその中の収めていたものは──。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加