プロローグ

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小人族の少年『ハル』は新人冒険者向けのダンジョン【ゴブリンの楽園】へと今日も足を踏み入れた。 130cmにも満たない身長、そして決して質の良いとは言えない小振りのナイフ。 齢は15を過ぎたばかり、つまり新人冒険者である。 誕生日を迎えた彼はすぐに冒険者ギルドにて登録を行った。 そしてその日から、毎日このダンジョンへとロマンを求め潜っている。 この物語は、ロマンを求める少年の、出会いと友情の物語である。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 仕組みは分からないけど、ダンジョンには様々な魔物が住んでいる。 このダンジョンはゴブリンと呼ばれる、僕と同くらいの身長と、緑色の皮膚を持つ魔物だ。 彼らはほとんど録な金にはならないけど、歯だけは頑丈で、素材として買い取ってもらえる。 ダンジョン特有のアイテム。 このダンジョンでは採れるのはせいぜい薬草程度だ。 けど、これもポーションの材料として買い取ってもらえる。 高難易度ダンジョンだと、武器を作るための鉱石なんかも手に入るらしい。 アーティファクト。 新人向けのダンジョンで出たという話は聞いたこともないけど、噂によると人魔大戦時代の武具や防具、アイテムが高難易度ダンジョンで出たらしい。 これが手に入れば、僕も強くなって、小人族で初の英雄になれるかもしれない! 今はゴブリンにも苦戦するけどね……。 いつも通りに進んでいく。 一階層のマップはもう頭に入っている。 馬車がすれ違えるほどの通路を真っ直ぐ進むと、分かれ道だ。 右には小部屋、真っ直ぐ進むとまた分かれ道。 左もまた分かれ道で、二階層へはこっちに進む。 どこのルートにもゴブリンがいる。 僕は弱いから、奥に進んではいけない。 まずは右の小部屋でゴブリンを倒して、まだ行けるなら真っ直ぐの道に行く。 上手くいって五体倒せればいい。 ゴブリン歯を売れば、それで一日の稼ぎと特訓には十分だ。 500ギンもあれば、夕食に芋を増やせる。 よし! 右の小部屋へと向かう。 ──何もいない。 「あれ? なんでゴブリンがいないんだ?」 普段なら絶対にゴブリンがいる。 冒険者が倒したって可能性は考えられるけど、このダンジョンに僕以外の冒険者は普通、入ってこない。 部屋の中央に目を向ける。 ──ある。追い求めたロマンがそこに。 「──宝箱だ……。」
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