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 四津谷薫の住むアパートは見事にボロく、取り壊して更地にするので入居者は退去しろという旨の貼り紙がしてあった。  その期日は二週間後で、残っているのはもう薫の家族だけだ。  玄関の扉の前で平野が声をかけると小学六年生の弟が中に入れてくれた。薫と同じく肌も髪も瞳も色素が薄い。  六畳の部屋と台所だけの空間。  母親は仕事でおらず、薫は部屋の隅でようやく歩き出したばかりの、やはり透明感のある妹の相手をしていた。  腕と足のギプスが痛々しい。  まったくこっちを見ようともしない薫に平野が声をかける。 「大勢で押し駆けちゃってごめんなさいね。生徒会長の津川さんが四津谷君のこと凄く心配してくれてて、お友達の市堰君と大谷君も一緒に来てくれたのよ」  友達じゃない! と明確に書かれた顔で挨拶をする奈津実。 「こんにちは、四津谷君。大変だったわね。ケガの具合はどう?」  薫は目線を動かす。  しかしそれは奈津実ではなく江を捉えるとハッと見開き、そのままじっと見つめた。 「カワイイ~! お名前は?」  江はハイハイの姿勢でじっとしている薫の妹と目線を合わせるため床に這いつくばり両手両足をジタバタとする。     
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