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「ううん。兄ちゃんがやってくれる。でも最近元気ないから心配」
どこを広げて聞こうかと朔也が迷っているうちに弟はジュースを飲み干し話を続ける。
「俺中学行ったらサッカー部に入りたくて。でも引っ越しもしなくちゃいけないし、お金ないから無理かなってこぼしてたんだ。したら兄ちゃんが少し前に大丈夫だよって。でもでもこの前やっぱり無理だって、約束やぶってゴメンて泣いてて」
何かが引っかかり、ということは、と考えようとした矢先、朔也の中で違うひらめきが弾けた。
「さっき猫がいっぱいいるって言ったな?」
「うん」
「見えるのか?」
「うん。ここにもいるよ」
そう言って弟は朔也の膝の上を指さす。
朔也には何も見えない。
そっか、と落ち着いて頷く朔也に弟は少し驚いたような嬉しいような表情を浮かべる。
「この公園に棲みついてる野良猫か?」
「うーん? どうかな? いつもあのおばあちゃんと一緒だからおばあちゃんの猫かも」
弟が再度指さす先を朔也は見る。
そこには暇そうな寂れたベンチがポツンとあるだけだった。
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