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平野は謹慎中の雅貴の家にも何度も通っていたが、おそらく父親の指示だろう、いつも使用人に門前払いされていた。
薫に頼まれ紀藤邸に出向いた江と朔也もやはり相手にはしてもらえなかった。
そこで江と朔也は奈津実を召還した。
どこまでも続く紀藤邸の塀の角でまごつく三人。
「何で私なの!?」
「生徒会長じゃん!」
「こんな時の為の生徒会長だろ?」
「意味が分からないわ! 平野先生でもダメなのに私に何ができるのよ!」
「ヨッ! 地上げ屋!」
「誰が地上げ屋よ!」
バタバタしている三人の横を大きなセダンが通り抜け紀藤邸の門の前で止まった。
後部座席から降りて来た紳士が三人の方に近づいてくる。
高級そうなスーツに身を包み恰幅の好い胸をさらに張っている。
きっと雅貴の父親で、絶対怒られるに違いない。
江と朔也は奈津実の後ろに隠れてグイグイと奈津実の背中を押した。
「雅貴の学校の子かな? やっぱりね。君は確か生徒会長の津川奈津実さん。入学式の時の挨拶素晴らしかったよ」
奈津実はさっきまでとは打って変わり余裕の笑みを浮かべて話し出す。
「ありがとうございます。雅貴君も文武両道で本当に頼もしくて、僭越ながら注目させていただいておりました。来年は生徒会に是非お力をお貸ししてもらえたらと切望しているところなんです。そんな雅貴君が理不尽な疑いをかけられていると聞きまして、微力ながらお力になれることはないかと矢も楯もたまらず不躾ながら出向いて来てしまいましたこと、どうかお許しください」
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