よもやま推理

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 生徒会長奥義『インギンブレイ・タタミカケール』で三人は開かずの門を突破した。  しかし雅貴には通用しなかった。  使用人に雅貴の部屋の前に案内してもらってから既に三十分。  奈津実がいくら技を使っても全く反応はない。 「あんた達も何か言いなさいよ」 「いや、それこそ会長でダメなもんオレらじゃダメだろ」  ヒソヒソと言い合う朔也と奈津実。  鞄の中をゴソゴソとしていた江は封筒を取り出し床に置き、雅貴の部屋の扉の隙間に差し込んだ。 「何なの、それ?」 「分かんない。薫クンから預かったの」 「四津谷が何で?」  三人が諦めかけた時、扉がガタガタと音をたて、その後しばらくしてガチャリと開いた。  一瞬の隙を逃さず江は強引に部屋に入り込む。 「わっ! 何だおまえ!」  ガタイの大きな雅貴に正面からディフェンスされた江はそのまま雅貴に抱きついた。 「キモッ! 離れろ!」  朔也が江を引き剥がす。 「何かスマン!」  部屋の扉を極力閉ざして雅貴は言う。 「……市堰江って?」 「ボク! ボク!」  朔也に羽交い絞めにされたまま楽しそうに手足をバタバタさせる江に眉をひそめた雅貴だったが、江の目をしっかりと見つめると何故か頷き表情を和らげた。    雅貴は軽く息を吐いて、少し厚めの封筒を差し出しキッと江を見据えて言う。 「これアイツに渡して。絶対だからな!」  江が封筒を受け取ると雅貴は勢いよく扉を閉めてしまった。
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