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「薫クンは雅貴クンを心配してる感じだったんだよね」
納得いかないけれど、と身振りで訴え奈津実は言う。
「じゃぁ、百歩譲って二人が仲良くしてたとして、四津谷君が自分で落ちたっていうのは本当だっていうの?」
答えたのは平野だ。
「いえ、証言を変えた生徒に何度もお願いして話を聞かせてもらったら一人の子が認めてくれたのよ。間違いなく紀藤君が突き飛ばしていたって」
でもそれは公にはしない約束だから証拠として突き付けられないんだけれど、と平野は語尾を小さくしていった。
「紀藤のオヤジの圧力か、目撃者の親の忖度か。世間じゃPTA会長の一言で大学の推薦操られるとかあるらしいからな」
そう言うと朔也はさも不服と笑い捨ててふと真顔になり、いつもの猫背をピンと伸ばしながら大きな声を出す。
「あ!」
「あぁ!!」
朔也の様子を察知して、いつものように江がほぼ同じタイミングで両手を上げ楽しげに叫ぶ。
そして奈津実のいつもの一言。
「うるさいわね! 何なのよ!」
「四津谷の弟が気になること言ってたんだよ。何だっけ?」
猫に気を取られて忘れてたとは口が裂けても言えない、と心に秘めて朔也は必死で思い出す。
「なんだっけー!」
「うるさい!」
再び背中を丸め腕を組み首をかしげる朔也。
「お金が入る当てが外れた的な……」
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